倉山満『政争家・三木武夫 田中角栄を殺した男』

倉山満『政争家・三木武夫 田中角栄を殺した男』 評論

倉山満政争家・三木武夫 田中角栄を殺した男』読了。
これもkindleunlimitedです。

三木武夫という人はリアルタイムではよく知りません。
田中角栄が総理だった時代はかろうじて覚えているのに、それより後の時代の三木総理という記憶がありません。
どういうことなのでしょうね。
子どもにはわかりにくい政治家だったということでしょうか。
ところが自分と同年代のはずのこの本の著者は、中学生のころから三木を追いかけてきたそうで。
自分が中学生の頃の思い出なんて、丸ノ内線でデストラーデに握手してもらって危うく西武に心を売り渡しそうになったくらいのもので、やはり鬼才は小さい頃から鬼才なのだな、と。

ところで自分がその三木という名前を初めて意識したのはまったく別のところです。
それは大学の学部生の頃、中学時代の同級生と電車でばったり遭遇したときのことでした。
その同級生の彼は、中学生の頃、成績「は」とても優秀でした。
そもそも、中学受験を失敗し、しかたなく公立中に進学してきたという口で、最初から周りの人間を見下しつつもどこか陰鬱な感じのあるヤツだったのを覚えています。
本人の性格的な部分もあるでしょうが、どこか世の中を斜にみるというか、典型的な中二病とは幾らか違うタイプの人生の投げ方をしていたのは、当然に受験に失敗したということもあるのだろうな、と今ならわかります。
自分が自分の子どもに中学受験を勧める気にならないのは、彼の中学生時代を見たからかもしれません。
何であれ12歳時点で、負け組の烙印を押されるのは楽しい経験では無いでしょう。
もちろん、そこから這い上がるのが人生、というのはありますが、一度曲がってしまった少年の心をもとに戻すのは相当に難しそうだと感じますし、実際彼も曲がったままだったというか、さらにこじらせてしまっていたのをその日に思い知るのですが。

彼はその後、高校受験では早稲田か慶応の付属高に受かり、そのまま高校・大学と進みました。
だから、大学は早慶なわけで、それも別に東大・京大や国公立医学部の受験に失敗しての早慶ではないので、普通に考えればそんなに卑屈にならなくても良いのですが、どことなくひねた感じは引きずったまま。

そのときの会話の中で、就職先が決まったと言っていましたが、なんとなくそれも投げやりでした。
なんでも、少し前に内定者歓迎パーティみたいなものがその内定先で行われたそうで、そこに取締役で三木武夫の孫がいました、と。
自分とさほど歳も変わらないのに、向こうは上場企業の取締役で自分はこれからそこに就職する身だ、と。
で、向こうから話しかけてくれたんだけど、
「君、○雄くんっていうんだ。じゃあ、○ちゃんって呼んでいい?」
と言われて、あっけにとられた、と。
「初めから住む世界の違う人間というのはいるもんなんだよな」と顔を歪めながら言いました。
これといってうまい言葉をかけることもできず、二人で電車を降りそこで別れたのですが、その日以来、その彼とは会っていません。
何回か開かれた同窓会にも彼はずっと不参加です。

ただ、それからというもの、三木と聞くと、自分は、会ったこともないそのお孫さんと、その中学生時代の同級生のことをまず思い出してしまうのでした。
で、そんな彼らのおじいちゃんのお話が本書。

自民党の中で弱小派閥を率い、弱者の恫喝で闘争を仕掛け、角栄を「殺し」、総理の座を得て、そして降ろされるまでの三木武夫のあれこれを、方々の書物から情報を抜き出してまとめた本といえます。
著者によると、角栄本がブームだったからこの本を書いた、とのことですが、そうでもなければ企画すらされなかった人物なのかなという読後感。
戦争で活躍したわけでもなく、選挙での大勝を期に駆け上がったわけでもなく、ひたすら永田町の中での条件闘争で勝ち上がった人の人生は、後の世の我々が参考にできるところが少ないのは事実です。

ただ、永田町での暗黙のルールみたいなものは、誰も教えてくれないので、そういう意味では勉強になりました。
「政調会長か総務会長のどちらかをやるのが総裁候補の条件」とか、「参議院を笑うものは参議院に泣く」とか。

また、永田町の権力闘争が、いつの間にか米中の代理戦争になってくる端緒も、このあたりからだということも。
まだまだ時間が経たないと表に出てこない情報はたくさんあると思いますが、55年体制の自民党対社会党が米ソ代理戦争だった時代から、米中代理戦争としての自民党内部の派閥間闘争へと政界の構図が変わるのが、下手したら60年代・70年代の話だとなると、中国脅威論だとかそのあたりの議論ももう少し冷静に積み上げていかないといけないのだろうなと感じました。
ともすると、中国が大国化したのはここ10年20年くらいの話で、工作をしかけてくるようになったのも、せいぜいそれくらいのこと、という意識でいると見落としてしまいそうなことは数多くあるのでしょう。

ただ、三木が正面切って等距離外交を言うことが出来るほどには、当時の日本はまだ大国だったのだな、と。
本人としては、その大国意識というのは、戦後復興の成った当時の日本ではなく、旧大日本帝国のそれだったようですが。

倉山満本

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