山田ルイ53世の文庫版『一発屋芸人列伝』を読む。
「列伝」というこのタイトルの付け方。
なんというか、『プロレススーパースター列伝』からの「サブカル・スーパースター鬱伝』を経由してのこれのような。
考えすぎだろうか。
まあ、元は雑誌の連載だそうなので、タイトルは編集者の方が付けたものでしょう。
訊ねるとしたらそちらでないといけないのかもしれませんが。
たまにネットの記事で目にすることのある髭男爵の山田ルイ53世。
もしかしたらお笑いの仕事より物書きの仕事のほうが多いのか?
と思いましたが、実際今となってはその通りのようでした。
で、相方のひぐち君はというと、ワインエキスパートの資格を取ったとかで、そちらの仕事もがんばるとか。
もはや完全にお笑い関係ない・・・。
この本の面白さは、取材する先だけでなく、著者の山田氏自身が同列の一発屋である点で、取材先の一発屋に対してたまに上から目線気味になるところも、概ね読者から「お前もじゃ」というツッコまれることを前提に書かれているところにある。
もちろんそれらも後に自身で回収するあたりが、彼が物書きとしてウケるところなのかもしれません。
読後感として感じるのは、前述の『サブカル~』に比べて、鬱をこじらせたような人が少ないのは、少なくとも一発当てたからじゃないかと。
サブカルは所詮サブカルで、その世界で何発当てようとも、やっぱり承認欲求みたいなものは満たされないのかな、と。
そして中年を迎えるにあたり、そこでの当たりすら世間様から忘れ去られていくと、鬱ってしまう傾向はあるような。
もちろん、山田ルイ53世と吉田豪の引き出し方の違いも多分にはあろうけれども、この本の出演者には、少なくとも一発は当てた爽快感みたいなものがある。
いや、そう感じるのは、「一発屋特集の取材なんです」と言われて、敢えてそれを受けるような人物ばかりだからだ、と言われればその通りで、一発屋呼ばわりされたくない芸人も、もうそっとしておいてくれという元芸人も、この本には出てこないわけで。
それでも体育会系と文化系のノリの違いみたいなものはあるかな、と。
この本に漂う空気感。
なんとなく同じ臭いを感じるものがあるとすれば、甲子園で優勝した投手を訪ねるあの人は今、的な。
お笑いは、体育会系なんだということを感じ取れる一冊。