映画『こはく』視聴。
アキラ100%と井浦新が兄弟というのはあり得るのか、というのは横においておくとして、ふたりとも片親で育ったがゆえに心が曲がってしまったところも含めての演技が素晴らしい。
特にアキラ100%は今後も予算に限界のある邦画で重宝されそうな感が。
柳ユーレイ、モロ師岡路線でしょうか。
ストーリーは長崎市内で完結する「母をたずねて三千里」的なものですが、「その近距離なのにずっと音信不通だったのか!」というツッコミを抜きにすれば感動的なラストです。
井浦新目線では5歳のときにいなくなった父なので、顔もほとんど覚えておらず、当初の回想シーンでは井浦自身が父を演じているものの、最後にはようやく出会えた父である鶴見辰吾でもう一度同じ回想シーンをやり直すところが秀逸。
井浦による回想シーンの時点では、父が家を出ていった理由がわからないので、彼の回想の中での父も無表情なのですが、終盤になり鶴田真由からその理由を知らされ、その後再会してからの回想では、いつかお前たちを迎えに行くから待っていろ、という目線の鶴見辰吾なのですね。
過去はいつでも現在からの解釈で如何様にも変わるということのこの上ない映像化です。
世を拗ねてまともな職につくこともなく虚言癖のあった兄(アキラ100%)も、最後のシーンでの表情を見る限り、どうやら落ち着いた生活を手に入れていきそうな感もあります。
それも表情でわかるのが良いですね。
単なる裸芸人ではありません。
更生のきっかけが母の死だったというのは、母に対しては残念なところもあるわけですけれども、その時間の留まらなさ、巻き戻らなさも本作のテーマでしょうか。
父が逃げた借金というのも、客観的に見れば40年以上も経っているわけで、かつての債権者も笑い話にしている時点でもはや時効案件なわけですが、だからと言ってノコノコと帰ってくることもしない、そういうところも含めて真面目な人だったのだ、と。
後からジワジワくる設定です。
それから音楽は車谷浩司が担当とのことですが、少し素直すぎる気も。
別に主題歌の歌詞で「こはく」を連呼する必要は無いのではなかろうか、と。
音楽もBAKUのときとはだいぶテイストが変わっていますが、もうあれから30年くらい経ちますからね。
それを求めての起用では無いでしょうからそこは問題ではありませんけれども。
ちなみに、第二のフリッパーズ・ギターを目指すとしていた彼のSpiral Lifeがいまいち伸びなかったのはBAKU時代に栃木出身であることを言い過ぎたからじゃないかなぁ、と自分は思います。
別に北関東出身だから渋谷系を謳ってはいけないというのでは無いでしょうが、それだけBAKUのイメージは強かったし衝撃的だったということでしょう。
一方の谷口くんが、多少BAKUっぽさの残ったソロを続けていたのも、彼の活動にとってはマイナスだったのかなぁ、なんて。
いや、それもこれも昔話でした。
U-NEXTでも見られます。