コスメティック田中『群れずに心穏やかに生きる 正しい孤独マインド入門』読了。
著者は孤独な生き方をテーマにしたYouTuberとのこと。
結構ニッチなところを開拓したんだな、と思いましたが、実はそんなにニッチではなかったのかも、と思い直しました。
YouTubeチャンネルの登録者数は37.9万人(2022年7月21日現在)ですからね。
内向的である人間がその強みを生かして生きていくにはどうすればよいか。
そういうテーマでの本はこれまでも目にしたことはありますが、妙に高尚だったり哲学的だったりしました。
内向的な人向けにはそういう書き方のほうがウケが良いからそうなっていた、というよりは、そういう考えをする人はそういうアウトプットになりがち、というだけだったのかもしれないな、と本書を読んで感じます。
著者はYouTuberということもあってか、努めて平易に、わかりやすい語り口での解説に徹していますね。
一応著者が語る言葉の中に先行研究の裏付けなどは含まれていますが、軽く読み進むことができます。
「正しい」孤独マインド入門とありますが、書名は出版社の意向でしょうし、これが「正しい」のかどうかは別として、いわゆる「陰キャ」の自覚があり、でも別に哲学者になる気はないんですけど、という人間が世の中をやり過ごすために有用な実践の提案が続きます。
ただ、御本人のYouTubeチャンネルの隆盛が示すように、「陰キャ」がネガティブワードで、また、そうであることで生きづらさを覚える時代もそろそろ終わりつつあるのかな、という気もしますよね。
その昔、岡田斗司夫が「オタク・イズ・デッド」という言葉で、周りから蔑まれるがゆえに一つの部族のような連帯意識のあったオタクの時代が終わっってしまったことを説いていましたが、「陰キャ」もそろそろ周りが揶揄する言葉というよりは、自身が自身を自虐的に語る一つの言葉でしかなくなってきているような。
自分にも思い当たる節はありますし。
もちろん「陰キャ」である人間には絶対に向かないだろう職種というものもありますが、無理してそういう仕事を選ぶ必要はないわけで、そういうことも本書では解説されています。
自分の性格や向き不向きをきちんと見極めて、自分のやりやすい環境に身を置けば、あとは少しのハックを使うことで、そんなに苦しむ事態にはならないはずですよ、というのが著者の言っていることで、十分に頷けます。
ただ、その境地に至るまでの学生時代はとにかく辛かったのだ、と事あるごとに触れられていますが…。
自分の学生時代を振り返ると、そもそも環境が特殊だったので、クラスの中でぼっちとかそういうことを考えずに済めたということがあり、そこは幸運でした。
普通高校ではなく高専という、それ自体ニッチで今で言う陰キャの多い環境に身を投じたので、結構似た者同士ばかりで、自身が特殊だ、とかいうことで悩むことはなかったのですね。
いわゆるオタク気質の強い、それこそ陰キャを煮詰めたような人間が勢ぞろい。
しかも、15の春に高専という進路を選ぶほどにはカウンターなライフプランを志向しているわけで、立ち位置がすでにサブカル。
クラスの中に1人も巨人ファンがいなかったのも頷けます。
(一応東京にある学校なのですが…)
もしあそこで普通高校に進学していたら、本書の著者のように、その後の進路というよりも人間性が、もっとねじ曲がったものになっていたように思えます。
その意味では良かったのかな、と。
その当時はだいぶ回り道をしている気分でしたが。
自分が「陰キャ」であるという自覚があって、なおかつ現在自身が抱えている多少の生きづらさの原因をそのキャラに求めるのであれば、本書を読むのはオススメします。