長谷川晶一『虹色球団』

長谷川晶一『虹色球団』 評論

長谷川晶一虹色球団』読了。

ファイターズファンとしては読んでおかなくてはならない本かもしれませんね。
当たり前ですがファイターズにゆかりのある人物が登場しています。
ただし、純粋な野球本かというとそれも違うのですが。
副題が「日拓ホームフライヤーズの10ヶ月」。
東映から球団を買い、そのわずか10ヶ月後に日本ハムに売却することになった日拓についての本です。

野球の話はほとんどありません。
まず日拓がチームを買収し、1973年のシーズンが開幕するまでで本書のほぼ半分を使っています。
そこに至るまでの登場人物とかが、現在のようなスポーツビジネス然としたものではないのですね。
まあ、なんというか893な世界というとあれですが、興行の世界ですよね。
考えてみたら、ホームとビジターで全国を股にかけて試合をするというのも、全国を行脚する一昔前の興行の世界と同じと言えば同じ。
そして当のフライヤーズは東映という映画屋の保有物です。
映画の世界というのも、昔はそういうものだったから、なんて話はよく聞きますし。
そういう世界に、一代で成り上がった新興企業の社長が入り込んでにっちもさっちも行かず、結局外堀を埋められて、手放さざるを得なくなったまでの経緯。

ん?何か、どこかで聞いたことのあるストーリーだぞ?
いや、ライブドアは球団の保有すらできませんでしたが・・・。

2004年の球界再編のとき、埒外にあったかと思えた堤氏が、なぜかいち早く1リーグ制を打ち出し、西武とロッテが合併するなんて話が出てきて、面食らいました。
ところが、本書を読むと、そもそものルーツが、西鉄からライオンズを買ったのが当時のロッテオーナーだった中村氏で、個人資産でチームを運営していたというところから来ている、なんてことがさらりと書いてあり、そうかその流れか、なんてあらためて納得したりして。
そういう豆知識を得るのにも役立ちます。

昔、テレ朝の西武対日本ハムの解説には、よく大下剛史さんが来ていました。
なんで広島OBの人が解説してるんだろうと不思議に思っていたのですが、もともとはフライヤーズだったんですね。
ファイターズになってから、新チームを作り上げるのには色が付きすぎているというので、広島にトレードに出された、と。
94年のサンフレッチェの優勝がかかった試合の日に、裏の西武日ハム戦の解説をしながら、サンフレッチェの途中経過が流れると、
「今日はサンフレッチェの優勝は無いな。」
とつぶやくなどしていて、自分の中では、大下さんはカープの人どころか、もう完全に広島の人ですけどね。
というか、あのころは野球中継の合間にJリーグの途中経過も入ったんですね。
今じゃ考えられないですが。

ちなみに日拓というと、もう我々の世代には神田うのの旦那の会社というイメージしかないですね。
それ以外だと、赤坂見附の駅前に日拓のパチンコ屋があるよな、という記憶くらいしか。
なので、こういう駅前でパチンコ屋をやってる輩ということは、どうせ戦後のどさくさのアレやろ?みたいなゲスいことを考えていましたが、まったく違いましたね。
創業の西村昭孝氏は日台ハーフの元警察官。
そもそも創業が昭和40年ですから、どの事業にせよ後発なんですね。
というか昭和40年に創業して、その8年後にはプロ野球球団を買収するところまで成り上がるわけですから、ホリエモンもびっくりの成金ですね。
しかも別に上場してマネーゲームで得た資金でもないですし。

本書のタイトルにもなった「虹色」というのは、7色のユニフォームを採用したところから。
その他にも球場での練習時にカラーボールを採用するなど、いろいろとアイデアを出したオーナーだったことがわかります。
ところが、前者は選手たちが、今日の試合に何を来ていけばいいのか混乱した、とか、後者は、意外と滑るので投げづらく、選手が肘を壊してしまった、とか、なんというか空回りエピソードには事欠かないのですね。
というか、そういうところだけ記憶されているのでしょうけれども。
結果的に10ヶ月で球団を手放してしまっただけに、良い印象は持ちづらいです。
それでも、著者はあまりこの西村オーナーのことを悪くは書いていません。
本人への取材が叶わなかったから何かを書こうにも材料がない、というのはあるでしょう。
けれども、東映から引き継ぎ日本ハムに引き渡したという一点において日拓には意味があったのだ、というむしろ好意的な解釈です。
でもなー、東京ファイターズは、あれはあれで結構暗黒でしたよ?
とファンとしては思います。
というか、あの暗黒期を経て、よく北の大地で蘇ったな、と。
そこらへんのプロジェクトとかは、多分藤井純一さんのとかを読めばよいのでしょうけれども。

なお、著者があとがきで述べている現在取り掛かっている「ある球団」について。

「まだ関係者の多くが存命で、資料も多く残っている」

というところから、自分は、「ライブドア・バファローズ」じゃないかな、と読んだのですがどうでしょう?

今でこそ、その後のライブドアショックから振り返り、ただ単に人気取りで言ってみただけ、みたいな扱いになっていますが、当時はそれなりに実現に向けて動いていたのだと思います。
その裏話だとかだとしたら、非常に興味があります。

数年前、ホリエモンが仙台で野球を見たとき、試合が終わってしばらくして球場の外に出たら、イーグルスファンの人が出待ちをしていてくれて、「堀江さんのおかげで東北にプロ野球チームが来ました。」とお礼を言いに来てくれた、と目をうるませながら語っていました。
いろんな経緯を経て、なぜか楽天が主体の新球団という形にはなりましたが、東北にプロ野球の球団が生まれたのは、ホリエモンのあの強引な手の挙げ方がなければあり得なかったのは事実でしょうからね。
そういうところを仙台のファンは覚えていたのですね。
楽天が意外とすんなりと仙台拠点のチームということで立ち上がったのは、ライブドアがバファローズ買収をぶち上げた段階で、仙台の行政レベルとか地方財界とかを巻き込んで、ある程度のたたき台ができていたからじゃないかと思うんですよね。
勝手な動きといえば勝手な動きなんですけど。
一方で、近鉄本体は球団の売却よりはオリックスとの合併で話を進めていたので、結局合併と新球団設立という変則的な形になりましたが。
その後の両チームの間の選手移動とか、岩隈の移籍ゴタゴタとか、ひどい扱いだなー、なんて思いましたけどね。
オリックスが旧近鉄の選手のうち、出したくない選手を予め囲っておき、その残りを楽天に差し上げるみたいなのは、どうなんだろうと思いましたよ。
それでも翌年オリックスが優勝したわけでもないのがまた、プロ野球の面白いところですが。

とまあ、そのあたりの振り返りを読みたいな、というこれは予想というより半ばは希望なんですけど。

長谷川晶一本

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