日本経済新聞社『北の200万都市 生らサッポロ 豪雪メガシティの挑戦』読了。
日経の札幌支社執筆の連載をまとめた本です。
内容は総花的ではありますが、北海道の財界の人たちが今何を考えているかがわかります。
なにしろインタビューは札幌市長から高橋名人までと幅広いです。
知り合いの会社も出てきましたが、小さい都市ならではのスタートアップからの成り上がりが素晴らしい。
ちなみに「生ら」に違和感あったのですが、本書での造語でした。
リアルな札幌を扱う書ということでこういうタイトルにしたそうで。
まあ、「なまら」は「なまら」ですからね。
元々、札幌の人口がどうやら200万人に届きそうだ、というところから始まった企画とのことです。
コロナで、就職のために道外に出る人が減ったことと、道内から札幌に集まる人が増えたことが要因としてあるのですね。
本の中では、IT企業へのインドなどからの就職例なども紹介されますが、メインの動きとしてはこういった道民の行動変化です。
これも、道内での他地域の衰退と引き換えに札幌だけが盛り上がっている、という見方をすれば、必ずしも喜ばしいことではないのでしょう。
ですが、そこはテーマではありません。
JR北海道への取材もありますが、よくニュースになるローカル線の惨状については触れられず、札幌圏でのマンション開発の話が主だったりします。
それも、社有地にゼネコンと組んで建てた分譲マンションとなると、売ったらそれで終わりの話なのですが・・・。
まあでも、JR北海道はお荷物みたいに言われていますが、北海道だけで黒字にしろ、と言われても限界がありますよね。
赤字だけしからん、廃線にせよ、という声も、今日日、国防という観点から見直されたりすることを期待したいところ。
とはいえ、札幌駅近くの大きな駐車場はロシア人が所有している、なんて話を以前聞いたことがありましたが・・・。
それはさておき、本書からは札幌が冬季五輪への誘致にかなりの熱量を持って動いているのがわかります。
2030年の誘致にかなり本気なのでしょう。
インタビューでの橋本聖子さんの口調からも、コロナの影響で東京で出来なかったことを札幌でやるのだ、という意気込みが感じられますが、そのあたりの事情も加味してIOCも含めたコンセンサスみたいなものが出来上がっているのでしょうか。
IOCからは、開催都市に選ばれるためには、市民の盛り上がり・賛意が重要であると言われています、みたいな物言いは、なんとなく選ぶのに足りないのはそこだけだとバッハ会長に言われてるので、みたいに聞こえるのですけれども。
本ならではの札幌基礎知識も勉強になりました。
言われてみれば、地下鉄が3本あって重複区間が結構あったり、札幌大通間の地下道には店がほとんどなかったり、おかしなところはありましたが、理由があったのですね。
合理的な理由ではないですけれども。
札幌の今の空気感をざっと知るのにちょうどよい一冊。