浜口倫太郎『闘資』読了。
ベンチャーキャピタリストを題材にした小説ということで手にとってみましたが、かなり大味な書きぶり。
丹念な取材を元にしたリアリティのある筆致、とかいうのを求める人には向きません。
著者はもともと放送作家だったそうで、善と悪、明と暗といったわかりやすいストーリーでまとめ上げるのが得意なのでしょうね、という感想です。
自分がかつて働いていた運用会社には、メガバンクの資本も入っていましたし、他の銀行さんからの転職組もいましたが、日系の金融機関の場合、基本的に縁故採用は無いです。
自分の子ども・孫というだけでなく、確か甥姪でもダメだったんじゃなかったかな。
個人での株取引にもかなりうるさく、例えば配偶者の個人の株式取引についても、本人の行ったものと同様の基準で制約が設けられていたり。
コンプライアンス至上主義というか、利益を上げることよりもそういう形式的なルール墨守の姿勢がメガバンクにはあるのでしょう。
良し悪しは別にして、逆に外資系の会社の方が、そういうところの倫理観は緩いと思います。
儲かれば良い、という。
なので、本書にあるようなメガバンクの頭取が自分の息子を子会社のキーマンに抜擢するとかいう話はありえません。
そもそも入社・入行できないので。
そうでなくとも、高校生の喧嘩で主人公が退学するとか、その後なぜか上京して土方の仕事に就くとか、そうはならんだろ、という展開が多いかな、という気はします。
そういう細かい矛盾はありつつも勢いで読ませ、中盤では全部オレの仕込みだった、的な流れで一旦落としつつ、少し暗転させつつも最後はハッピーエンドという展開はドラマ向きな感じ、と思いましたが、たしかに元放送作家さんの作品でした。
ベンチャーキャピタリストの仕事について知りたいという人にとっては、この本は違うかもしれません。