エムカク『明石家さんまヒストリー 2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ』読了。
前著の『明石家さんまヒストリー 1』が1955~1981という生誕からの括りだったのに比べて、本書が取り上げているのは4年間。
実に濃厚な4年間だったことは、全400ページという本の厚みを見てもわかります。
ほぼ雑誌の引用や、ラジオ・テレビの文字書き起こしですからね。
露出が急激に増えたこの4年を追った「全仕事」的な記録書。
章立ては前著同様に、1年で1章です。
1.躍動 1982年の明石家さんま
2.自愛 1983年の明石家さんま
3.雑談 1984年の明石家さんま
4.運命 1985年の明石家さんま
前著同様に、著者自身の感想や意見などは、各章の最後にコラムの形で挟んであり、基本的には本書は明石家さんまの語ったことの引用・書き起こしで進みます。
ちなみに副題は「生きてるだけで丸もうけ」ですが、IMALUちゃんは生まれていません。
というか大竹さんとも出会っていません。
それでもこの言葉が副題となっている意味は、本書を読み通すと分かる仕掛けになっています。
「ドリフ」も「ひょうきん族」も、子供のころはそれなりに見ていた世代ですが、どうも過去の記憶の捏造が起きていて、「ひょうきん族」というと、たけしとさんまの二大巨頭が引っ張っていた番組というイメージになってしまっています。
でも、本書を読むと、むしろ番組開始当初は、東のたけしと西の紳助の二枚看板で裏のTBSのドリフに対抗する、という趣きのほうが強かったようですね。
それでも、自分がブラックデビル、アミダばばあ、パーデンネン、ナンデスカマンといったキャラの映像とともに、今ではたけしとさんまの番組だったという印象で理解しているくらいには、彼の成り上がりがこの4年で見られたということなのでしょう。
本書では、寝る間もなく東京と大阪を往復する様が描かれていて、そのスケジュール感を読んでいるだけでこちらは疲れてくるのですが、本書の中での彼は疲れていないのですね。
本人が「きっと寝てるあいだに、吉本(興業)の社員に覚醒剤でも打たれてるんじゃないか」とうそぶくくらいに。
でもですね。これらはすべて表の顔。
本書は明石家さんまに当時接していた人による本でもなければ、本人に当たって当時のことを訊ねた本でもありません。
あくまでも、メディアに出ていた「明石家さんま」の発言をまとめたものなので、常にハイテンションだったように錯覚してしまうのですね。
それでも時折、東京ではしばらくホテルぐらしをしていて、ホテルだと寂しくなるときがあって、そういうときは女の子を呼んでしまうから良くなかった、みたいな記述もあったりして、その唐突さに面食らうのですが、まあ、こういうところも無理して内面を詮索して繋げないところが、自分には面白かったです。
ノンフィクションライターとして評価できるかというと微妙ですが。
読み進めていくうちに、あー、そういえばあったなこんなこと、みたいなことに数多く出会います。
サラリーマンなんていうキャラはほぼ忘れかけていましたが、実際すぐに消えたキャラでした。
安岡力也のホタテマンは登場したときから、あまりお笑いっぽくなかったけど、実際あのキャラの生まれ自体が、まったくお笑いとはかけ離れたところだったのだな、と。
ロスジェネホイホイ的な一冊。