万城目学『ヒトコブラクダ層ぜっと』読了。
相変わらずの万城目ワールドです。
タイトルのわけの分からなさはいつものことで、おつきあいするしかありませんね。
そもそも『鴨川ホルモー』だってなんのことやらでしたし、唯一まともそうだった『プリンセス・トヨトミ』だって、よく考えたら謎。
それでも読み進めるとすべてが力技で納得させられてしまうのが万城目節の真骨頂なのでしょう。
本書のお話は、2022年11月に始まり2024年11月で終わっています。
なので、すっかりコロナ後の世界なのかと思ったらまったくそんなことはなく、さらには東京オリンピックは普通に2020年に開催された体で進んでいます。
どういうことかと思いましたが、「小説幻冬」という雑誌の2017年11月号から連載をしていたお話ということで、納得しました。
著者としてはそのまま出版することに葛藤もあったと思います。
下巻の最後に以下の弁明があります。
執筆開始時には実際の出来事になるはずだったものが、架空の設定になってしまった部分もあります。それもまた創作の醍醐味であり、あえて修正せず、世に出すことにしました。
まあ、これはしゃーない。
コロナが少なからずテーマになるお話は、また次回以降のお楽しみということにさせていただこうと思います。
あと、これまで万城目作品は、よく映画化されていましたが、今回のお話は、一応日本人が主人公ですが、イラクというかメソポタミア文明が舞台で、さすがに映画化は難しいかな、と。
イラクで撮影しなくてはならない、ということはないですが、砂漠とか地下建造物とか、安く作ると本当に安っぽい映像になりますからね・・・。
まあ、映画の『プリンセス・トヨトミ』も無人の大阪の絵とか、かなり安っぽかったですが・・・。
合成の街並みをバックに綾瀬はるかが歩いているだけというね。
『鴨川ホルモー』の、四条烏丸の交差点での各チームの初顔合わせの場面は、きちんとあの場所で撮影したと思われるだけに、あれは残念でした。
あと、本書のクライマックスというか事件は、テンポ良く終章の前に片付いてしまうのですが、終章に入り、少し落ち着いた場面で、それまでの伏線が次々と回収されていくのが見事です。
少し説明過剰な嫌いもあったりして、設定としてそこまで考えていたとしても、読者の想像にまかせておけば良かったのに、みたいな人はいるとは思いますが。
あとは、今回の執筆にあたり、相当中東の歴史を勉強されたんだろうなぁ、と。
もしかしたら身近に京大の史学科出身の同級生がいたりするのかな、という気もしますが。
意外と担当の編集さんとかだったりして。
最後、メソポタミアにまつわるお話の終わりだけに「目には目を歯には歯を」の否定で閉じるのが美しかったです。
時代は違うらしいですが。