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久保田哲『明治十四年の政変』読了。
タイトルの通り明治14年の本です。
もちろんその前後も書いているので、明治の10年代の本という言い方が正しいのでしょうか。
時系列での章立てなので非常にわかりやすいです。
また、序章で登場人物を一通り解説していて、こういう新書ならではの構成はありがたいですね。
この時代に、教科書以上の知識はないので助かります。
というか、教科書以下の知識ですね。
通っていた学校の日本史の授業は、南北朝の後、室町幕府の成立ぐらいまでやったら時間切れで、
「後は大河見て勉強しとけ。」
で終わりましたからね。
受験が関係しないと、とことん教官の趣味が先行するものです。
ちなみに世界史なんてもっとひどくて、担当教官がイスラム史専攻だからというので、ムハンマドからはじまりました。
個人的には意外と面白かったですけど、授業中は寝ている生徒も多かったような。
とまあ、日本史に関しては、まさに大河で知っている以上の知識は無かったりするわけですが、この本の内容についての読後感としては、大河にはなりえないかな、という・・・。
ドラマ的には、どういじっても、血湧き肉躍る展開にはならないですよね。
題材が、開拓使の払い下げ事件と議会開設の詔と大隈重信の下野です。
Amazonレビューを読むと、どうやら井上毅がこの政変のフィクサーであることが史料と考察からわかるあたりが説として割と新しく、そして面白いらしいのですが、うん、まあ、地味です。
別に井上毅は青天は衝かないでしょう。
ただ、維新は成ったもののまだ14年。西南戦争からもまだ4年。
政府そのものに危うさの残る時代の空気感というか、そういうものを強く感じます。
政府の中にいる人間も、下手をすると、文字通り命が狙われるわけで。
というか、大久保もテロルで死んでおり。
大久保なき後の政府の中の動きから本書は始まります。
そういった混迷の中でのそれぞれの決断の重さというのは、今とは比べ物にならないですね。
明治政府の中枢の人間からすると、条約は改正したい。
そのためには近代国家にしないといけない。
憲法も選挙も必要だ。
でも「市民」はまだ成熟していない。
市井の運動家の主張を聞いていたら、薩長の自分らは政府から追い出されてしまう。
大隈の主張はそれらと同様っぽい。
ていうか、なんで隠して帝に奏上してんの?
これ、クーデター狙ってるんちゃうん?
メディアはいろいろ書き立ててくる。
早く追い出さないと。
もしかして福沢も絡んでる?
と、疑心暗鬼の連鎖で、当の大隈が沈黙したまま、政府から追い出されていく様は、今日から見れば滑稽と言えば滑稽です。
ただ、それでも滑稽で済むのは、下野した後、西郷隆盛のように内戦の頭領に担ぎ上げられたわけでもなく、後年、選挙によって国政に返り咲いたことを我々が知っているからであり、それができたのも選挙という仕組みができたからです。
この点から見ると、明治14年のこれらの出来事を機に、日本は近代国家の道筋を立てられたとも言えるわけで、それらを時系列でざっくり振り返ることのできる本書は非常にためになる一冊となりますね。
以下、トリビアというか面白かった点。
・大隈の憲法案では、官僚を政党官と永久官にわけていた。
・開拓使払い下げの報道の背後に利害関係。
当時、主要航路は三菱が独占していたが、北海道の航路は開拓使と三菱が拮抗。
開拓使が払い下げられるのは三菱には不都合。
マスコミ・リークは三菱・福沢・大隈ラインから?との見立てあり。
・大隈の下野によって松方財政がスタート。
松方デフレの人というイメージしか無かったですが、彼により初めて新政府の財政基盤が整うことになったという評価も。