劉慈欣『三体Ⅲ 死神永生』読了。
『三体Ⅱ 黒暗森林』を読み終えたとき、やはり中国語を勉強し直そうか、なんて思ったわけですが、結局モノにはならずに翻訳版を待っての読書となりました。
一応、中国語は毎日「Duolingo」でトレーニングしてますけどね。
まあ、あれは脳トレに近いようなものなので・・・。
というわけで、レビューです。
ネタバレあり、と書いておいたほうが良いのかな?
1967年の文化大革命のシーンから始まった『三体1』ですが、完結編たるこの『三体3』は、18906416年(もちろん西暦)あたりで終わりました。
どういう時間軸?
結局、エンディング時点で生きている地球人は全宇宙の中で二人!
最後、脳だけになった元地球人からプレゼントされた宇宙で暮らしていた二人は、その宇宙を大宇宙に返還することになり・・・、と自分でも書いていてよくわからなくなりますね。
全3作のなかではもっともSF色が強いかもしれません。
前作では、面壁者の脅しによる抑止が完成し、三体人と地球人の間の均衡が保たれました。
前作のレビューでその抑止のからくりは書きましたが、簡単に言うと互いに互いの星の位置を全宇宙にばらまくぞ、と脅し合うことで戦争を回避するというものです。
宇宙の資源が一定である以上、ほかの文明を発見したらそこを潰しておくのが自分たちの発展にとっては最善手。
そこから発展して、相手の位置情報を全宇宙に触れ回ることで、より高位の文明によるその相手への攻撃を期待する、という論理です。
この均衡は、大国同士で核ミサイルのボタンに手をかけた状態でいるみたいなものでしょうか。
そして、地球側のその任についている者を面壁者といい、前作の主人公でした。
ところがその面壁者の職が本作の主人公に移ったことで、その抑止が崩れます。
というより、移ったタイミングを見計らって三体人が攻撃をしかけてくるわけですね。
相手は本作の主人公について長いこと分析をしていて、たとえ地球が攻撃を受けてもそのボタンを押せないタイプの人間だろう、という読みの下、ずっとその機会を待っていた、と。
そして、三体文明が地球を一旦征服するわけですが、実は前作で太陽系から逃げていた宇宙船にも、三体人の星の位置をばらまく信号を送るためのボタンがあったのでした。
その宇宙船が、地球が三体人から攻撃を受けたという情報を受け、そのボタンを押したことで、間接的に三体人の星系は崩壊し、地球は解放されます。
このあたりは、常に所在不明の原潜が核ミサイルを保つことで完全な核抑止が成立することと同じでしたね。
この作品では、その宇宙船のボタンの存在に気づかなかった三体人に落ち度があった、ということになりますが。
いずれにせよ、地上・地下に関わらず、所在の明らかな核ミサイル基地だけでは核抑止には十分ではないという示唆にはなります。
いずれにせよ、高次の文明からの攻撃であっけなく三体人の惑星は消えます。
地球人は独立を回復しますが、三体文明への攻撃が光量を星にぶつけるというものだったので、地球でも、将来的に自分たちが高次の文明から同じ攻撃を受けたときに生き延びられるようにと、その対策が検討されます。
方向性としては3つ
1.光量攻撃が来たときに他の惑星の裏に隠れられるようなスペースコロニーを作りそこで暮らす。
2.宇宙船で遠くへ逃げる。
3.太陽系自体をブラックホールにして気配を消す。
ところが、高次文明からの地球人への攻撃は、三体人の星系に対して行われた、光量を照射するとかいうものではなく、もっとSF的なものでした。
書いていてよくわからなくなりますが・・・、次元を落とす、というものです。
太陽系を3次元空間から2次元に落とすことで絶滅に追い込む、と。
いやー、ここらへんは読まないとわかりません。(語彙力)
というか読んでもわからないですけどね。
急に高次文明の歌手が出てきて、仕事として音楽を奏でるような描写で一つの文明を潰すという・・・。
いずれにせよ、地球文明も、2の方向性で開発された宇宙船で遠くへ逃げた主人公と相棒のほかはみんな絶滅してしまうんですね。
そして宇宙の果てで、先程の地球を救った宇宙船の乗組員と落ち合い、新しい生活を始める、と。
かなり端折るとこんな感じ。
1,2に比べてもかなりSF色が強く好き好きでそうですが、一応これで完結です。
Netflixでドラマ化されるそうですが、どんだけお金のかかった映像になるのか見てみたいです。
最悪脱いでおけばなんとかなる『全裸監督』とは訳が違いますからね・・・。