三体2 あらすじ

三体2 あらすじ 評論

劉慈欣三体Ⅱ 黒暗森林』を読む。
前作の『三体』には、もう一度中国語を学び直そうかと思ったくらいにはハマったのですが、結局そんなこともなく・・・。
当然のように日本語版が出た今のタイミングで『三体2』を読むこととなったのでした。

SFというものへの理解が、子供の頃に読んだ星新一筒井康隆あたりで止まっている自分としては、このジャンルがどのあたりのところまで進んでいているのかわからないし、SFの作法にもちょっと疎いところがあるが、それなりに読めてしまう。

こういった世界観をまったく受け付けないわけでもないのは、ドラえもんで育った世代には、基礎教養としてこういったストーリーに対するリテラシーがあるのかな、と思ったりする。

あらすじとしては、地球と、地球に近い恒星系の惑星に生きる三体星人との関わりの物語ということになるが、無論距離が離れているので、頻繁な外交とか各地での戦闘譚とかいうのが描写されるわけではない。
なにせ前作で明らかになったのは、地球征服に向け三体星人は艦隊を組んで彼らの星を出発したが、彼らが地球に到達するのは450年後という設定である。

ドラえもん的にいうと、タイムマシンどこでもドアがない世界。
で、なおかつ光速を超える移動手段はありえないので、その状況で2つの星の交わりをどう描くかにはかなりの工夫が必要。

この小説では2つの道具が用意されていて、一つは「智子」という三体星人の科学者が地球に送り込んできたスパコン?監視網?というもの。
高次元で作ったものをこの三次元の世界に送り込んできたという設定で、これにより情報伝達の観点では、この距離の問題が解決されている。
じゃあ、三体星人自体もその仕組みでこっちに来れないのか?と思ったが、そういうことは出来ない模様。
地球人はその「智子」により、すべての行動が監視され、場合によっては地球人が観測する物理法則まで乱される結果になる。
このため地球人はこれ以上科学技術を進歩させることが出来なくなった、という設定なので、三体星人がやってくる数百年後まで、技術に大きなパラダイムシフトがないことにも正当性が与えられている。

もう一つは「人工冬眠」で、これにより人の一生よりも遥かに長い時間と距離を跨ぐ物語に連続性をもたせている。
タイムマシンとは違い時の流れは一方向なので、主人公を含めもう一度生き直す、みたいなことはできないが、自分の意志で眠りにつくことができ、生きたくない時代にはその時代を眠ることでスルーするという選択ができることになっている。
(その割には自殺する登場人物も出るのですが。)
目覚めについては、眠りに入る前に本人がある程度の条件設定をするのだが、自動タイマーとかそういうものではないので、他者によって起こされる以上、誰によって、なぜその時代に起こされたのか、ということが、登場する各人物それぞれで物語の鍵にもなっている。

「智子」によりすべての行動が監視され、対抗手段の開発も難しいであろう状況で、地球人がとった対抗策が「面壁計画」というもので、その骨子はどんなに行動が監視されていても、考えていることは、その限りにおいては三体星人に悟られることはない、というもの。

三体星人の弱点は、他者の思考を読む能力が低いという点。
彼ら同士のコミュニケーションは言語の発話によらないテレパシーを基としており、思ったことはすべて伝わってしまうのが前提なので、会話でブラフをかけたり、騙して煙に巻く、みたいなことがない。
結果的に、内面を探るとか、本当は何を考えているのだろう、と考える能力がまったく育っていない。
清水義範のショートショートで「もれパス係長」というのがありましたが、彼ら同士ではあんな感じで思考の断片まで含めてダダ漏れなんでしょうね。

そこで、「面壁計画」のもと、国連の延長線上の組織によって選ばれた面壁者は、権力を与えられつつもその行使に何らの説明責任がない。その意図や目的を発話する必要もない、という決まりになっていて、その面壁者の繰り出す戦略によって地球人は事態の打開を図る流れになっている。

こういう、選ばれし者、みたいな設定は、チャイナの伝統なのかな?
なんて思うが、それに伴う、面壁者とその他地球人との間の軋轢だったり、面壁者自身の人格崩壊だったり、そのあたりの描写の中盤も面白い。
決して古代のかの大陸にあったとされる賢人政治みたいなものを是として描いているわけではない。

「智子」による監視は、現在の金盾を思い起こさせるし、内面こそは決して読み取られない牙城、という考えは、信用スコアの積み上げによる個人属性の判断への批評かな?なんてことも想起させるが、著者のためにも深読みしないであげたほうが良さそう。

ネットフリックスでの実写化にむけて、米中間で色々な軋轢も出てきている。
オバマが本作を褒めた、とかいう時代とは明らかに違うのだ。

物語の終盤に向けての謎解きは、今作の最初で蒔かれた宇宙社会学の公理というものが前面に出てくる。
それは、

  1. 文明は生き残ることを最優先とする。
  2. 文明は成長し拡大するが、宇宙の総質量は一定である。

というもので、これに加えて「猜疑連鎖」と「技術爆発」が鍵となるが、この思想に触れてしまったがために、主人公は命を狙われることになったり、面壁者に選ばれたりするはめになったりする。
それでも最後まで読んでみても、この主人公が面壁者に選ばれることになった経緯は不明。
彼が選ばれし者である理由は十二分に書かれているが、国連的な組織がどうやって彼を見つけたのか。
三体星人が彼を危険人物としてマークするのはわかる。
すべての会話を傍聴しているのだから。
だが、地球人の側が単なる一般人である彼を面壁者として選ぶことになった経緯がちょっとわからない。

ともあれ、この公理の言っていることは、宇宙の資源は一定だが、文明が進めば人口も増えるし、技術が進歩すれば、その文明が必要とする資源の量も上昇する。
なので、ほかの文明を発見したら、潰せるなら潰しておくのが最善手、ということ。

とまあ、ぶっそうで、これがチャイナの思考なのか、と。

で、主人公の戦略もこの公理に立脚していて、三体星人の住む惑星の位置を全宇宙にばらまくと脅すことで、地球への攻撃を止めさせるというもの。
この脅しは、所在を知れば、そこを潰しに来る文明が宇宙のどこかには居るだろう、という予期に基づいている。

チャイナの膨張主義の背景もわかってしまう恐ろしい本。

一体『三体3』はどんな展開になるのだろうか。
また一年待つことになるが、その前に、中国語を勉強し直すか。
いや、また日本語版が出るまで待ってしまいそう・・・。

劉慈欣本

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